東京近郊の商店街の一角に建つ、2世帯住宅です。
商店街の通り沿いに大きく張り出した軒下のアプローチは、駅までの人々が行き交うパブリックスペース。それに面する共有エントランスを2世帯のコモンスペースとし、そこから分かれ各世帯のプライベートスペースへ、緩やかにつながる住宅です。
周囲が建て込む地下から2階までは、遮音性と蓄熱性に優れた外断熱鉄筋コンクリート造とし、空に開ける最上階は、大らかな木屋根がかかるペントハウスです。育ち盛りの子供と、犬との暮らしを優しく包みます。
商店街という立地を活かし、エントランスにはベンチのあるポケットパークを。
まちに開く住まいです。
東西に視線が抜ける最上階のリビングダイニング。開放感あふれる空間です。
子世帯の寝室。廊下との間仕切り壁には輻射冷暖房を組み込んでいます。
親世帯の居間と食堂。外壁を外断熱にして室内はコンクリート打ち放しに。壁、天井、タイルの床に輻射冷暖房の熱を蓄え、年間を通じて温度差の少ない室内環境を保っています。趣味で製作されている木工家具の質感が引き立つ空間です。
親世帯の子供部屋に続く廊下。洗面所を兼ねています。緑の黒板塗装はメッセージボードに。ガラスの床からは1階のエントランスホールが見え、気配が伝わります。
親世帯の子供部屋。左右対称の2つの部屋から別々に使う2段ベッド。コンパクトなドミトリーのような空間です。
静かで温度の安定した地階は、親世帯の寝室。階段下に洗濯機と洗面を組み込みました。
階段収納の向こうは、通りに面した書斎。パブリックな空気を感じながら研究に没頭できる図書館のキャレルのようなワークスペースです。
2世帯共用のエントランスホール。
手前に玄関ドア、中央に親世帯のエレベーター、奥には小さなベンチスペースがあります。天井にはめ込まれたガラスを通して、親世帯の子供部屋の様子が見えます。
2世帯のちょっとした毎日の交流や、喧騒と生活空間のバッファーソーンになります。
ベンチスペースは、通りを眺めるパーソナルリビング。
商店街に面するエントランスには、ベンチのあるポケットパークをつくっています。
門柱から張り出すカウンターには、季節の花や地域の方々に向けたお知らせを置いたり、フックにリードをつないで犬の散歩仲間が集うことも。ときにはヤードセールをすることもあります。
住宅であっても、通りに開き、積極的にまちづくりに参加しています。
ペントハウスの木屋根は、ベイマツの角材を隙間なく並べたラーメン接合の木版。工場でユニット化し建て込みました。
竣工 | 2012
用途 | 住宅
構造 | 鉄筋コンクリート造 + 木造
構造設計 | 鈴木啓/ASA
設備設計 | yamada machinery office
施工 | TH-1
写真 | 熊谷順